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G型砲について

後期型のバリエーション

 三年式12センチ単装砲、いわゆるG型砲は大正期以降の多くの小艦艇に搭載されたが、そのシールド形状にはいくつかのバリエーションがある。細部の相違まで含めると、その種類はかなりの数に上りB型砲に匹敵するものがある。ここではその中から、睦月型に搭載された後期型のシールドについて見てみたい。

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 後期型の照準孔には蓋が付けられていて、イラストなどでは左右のスライド式に描かれていることが多い。ところが実際には、二枚に分かれて上下に開くヒンジ式の扉を持つタイプの写真も多いのである。この2つの型式の関係性にはよくわからない部分がある。

 神風型の「朝凪」「夕凪」の一番砲は、大正15年の時点ではヒンジ式だが、昭和9年頃にはスライド式に変更されている。同じようなことは睦月型でも有って、昭和7年頃の「長月」の3番砲はヒンジ式だが、戦時中に撮影された残骸ではスライド式になっている。おそらくG型砲後期型の基本形はヒンジ式であって、スライド式は後発の改良型になるのではないか。

 もっとも「三日月」のように最終時までヒンジ式のままだったのでは?と思われる艦もあって、すべてのG型がスライド式になった、というわけでもないようだ。

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 昭和12年上海における「三日月」。一番砲の照準孔トビラは上下分割のヒンジ式で、上に庇が付いている。上下分割式は下のトビラを外して、上だけで運用されているケースも多い。照準孔の開口部がなんとなく小さく見えたら、それは上下分割のヒンジ式だ。

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 「三日月」のG型砲は戦時中に照準孔を拡大していたことが、残骸写真から確認されている。同様の例は神風型の「春風」にもみられ、末期のG型砲搭載艦は同じ改造を施していた可能性がある。拡大の意図や経緯は不明。

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 G型砲を後方から見たところ。睦月型ではないが、シールド内のディテールがわかる良い写真。下のスカート部分の様子もわかる。

 上部には天幕が収納されている。ここまで再現する人もいないと思うが。ちなみにこの幕をおろした状態は「日本駆逐艦史(新版)」のP73の刈萱の写真で確認することができる。

 この写真、よく見ると画面右の砲身付近にトビラの一部が写っている。つまりこのシールドの照準孔トビラはスライド式だということだ。

睦月型 G型砲について 参考資料

グランプリ出版:「軍艦メカニズム図鑑 - 日本の駆逐艦」 原書房:「昭和造船史別冊(日本海軍艦艇図面集)」  光人社:「図解・日本の駆逐艦」 「写真日本の軍艦 別巻2」 潮書房:丸スペシャルNo.51「日本の駆逐艦Ⅱ」 学研:51「真実の艦艇史2」、64「睦月型駆逐艦」  「海と空」昭和18年1月号 他

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