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睦月型制作編

菊月を作る その3

ヒートしないでプレスする〜カッターの作り方と防盾問題への回答

 制作編の3回目は、実技編ということで、朝潮編で予告した、カッターの作り方について解説してみたい。 キットのカッターは上面にダボ穴があって、実感を損ねている。何度も書いたことだが、これ、なんとかならないものだろうか。差し替えようにも、別売パーツには睦月型の6メートルカッターが無い。 いつもだったらシートをかけてごまかすところだが、今回はキットのパーツを元に自作してみようと思う。そんなに大したことではないんだけどね。

 

 用意するものは、キットの6mカッターのパーツ、おゆまる、ホームセンターなんかで売ってるラッカーシンナー、0.1または0.15のプラシート。朝潮の時にも言ったが、カッターの自作は結局のところ船殻、要するにガワをどう作るかだ。この方法はキットのパーツを中空状態で複製しよう、というものだ。 手順の詳細は下図の通り。ラッカーシンナーで溶けたシートが、溶剤が揮発するにつれて型の内側に貼り付いていき、乾燥して成形されるわけだ。厳密にはプレスしていないのだけど、気圧が溶けたプラ材を型に押し付けているわけだから、プレスと言えないこともない。出来上がりもバキュームフォームとよく似てるし。

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上の5および6の工程の状態。使用したシートは0.3ミリのタミヤのプラバン。0.3ミリを使用する場合は、3の工程で、上からラッカーシンナーを2・3滴落としておくことをおすすめする。3で開けた穴は0.5ミリくらいだが、この穴は溶けたプラで自然に塞がる。

 

各作業にあたっては、換気と家人からの苦情にくれぐれも留意のこと。

 0.1または0.15などのシートを使用する場合は、1回の作業では出来上がりが薄すぎるので、2〜4の工程を繰り返して積層していく。この場合、乾燥を待たずに次のシートを重ねていっていい。0.3ミリのプラバンを使用すれば一発取りが可能だが、失敗(下記参照)も多くなる。薄いシートを使うと失敗が少ない上にディテールがよく出るのだが、強度が無い。肉厚が薄すぎる場合は、積層の回数を増やすか、内側に瞬間接着剤を塗布するなど、色々試してみていただきたい。

 

 乾燥は気温や湿度、大きさに影響されるので、なんとも言えないが3日から1週間くらい、周囲のプラを押してみて判断を。充分な乾燥時間を取ることが肝要だ。型から外した後も、しばらく放置して乾燥させるのが望ましい。

 

とは言うものの、うまくいかない時もある。

 

気泡が入ってしまったり、型に完全に密着しないまま途中で硬化してしまったり。うまくいかない場合は穴を開けて、ラッカーシンナーを注ぎ込むことでリカバリーが可能だ。

失敗した場合の

リカバリーの方法

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気泡が入ると、図のように丸く膨れてくる。これを放置すると中途半端な形で固まってしまうので、針などで潰して穴を開け、シンナーを注ぐ。場合によっては筆などで綺麗にならす。この辺りは卵焼きを焼くときに気泡を潰す要領で。

こうして出来上がった艇体を切り出して縁を綺麗に成形したら、プラ材で腰掛け板を取り付けて完成となる。今回は便宜上キットのパーツを原型に使用したけれども、プラ積層から削り出したムクの艇体を原型にすれば、完全オリジナルのカッターも作成可能だ。

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 さて、これが溶剤を使ったパーツの作成方法なのだが、別にカッターを作るためだけに考え出した訳では無い。この技術の本命はG型砲の防盾の複製にある。カッターはそのための予行演習のようなものだ。

 睦月のキットレビューで書いた防盾の修正方法については、色々なご意見をいただいた。その中に、方法は理解できるが、この作業を何度も行うのはツライ、というものがあった。ごもっともである。1艦だけならまだしも複数作るとなると、4の倍数で作業が増えていく。確かにこれは辛い。ヤマシタの次回作は神風型ではないようなので、このパーツは当面修正されそうもない。なんとかならないものか。そこで考えたのが上記の方法で、まず形の難しく無いカッターで様子を見て、次に防盾を試してみた。結果は以下の通り。

全国4人くらいのG型砲ファンのみなさん。防盾をどうするか、これが私の回答だ!

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修正したパーツを原型に、おゆまる型取り、ラッカーシンナーとプラシートで複製していく。左から原型・複製したパーツ・切り出したもの。複製は側面のディテールがちょっと甘い。

0.3ミリの一発取りも不可能ではないが、気泡が入り易くディテールもダルくなる。基本形だけを複製して、細部は個別に追加してもいいかもしれない。

型そのものの出来不出来もあるので、一つ二つと言わず、四つも五つも 型取ってみて、いくつも作ってみることをおすすめする。

こんな裏技も

薄いプラシートを積層して成形する場合、最初のプラシートにグレーを、次のシートに白色のものを使用すると、外側がグレーで内側が白のハイブリッドなパーツを作ることができる。(うまく行かずにマーブル模様になったりすることもあるが)写真は、こうして作ったカッターのパーツ。塗装がラク。

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 この方法は手に入れてしまえば、結構重宝するのだけど、乾燥に時間がかかるのが難点だな。あとで出てくるが、魚雷収納函の蓋のパターンなんかもこれで複製している。小物など、肉厚の薄いものの作成には役に立つ技術で、欲張って大きいものや肉厚のあるものを作ろうとすると、いつまでたっても乾かなかったり、変形や縮小に悩まされることになる。成形品だけでなく、おゆまるの型自体が縮むこともある。それから、高低差があるもの、型が深くなるものも難しかったりする。型の底に溶けたプラ材が溜まってしまうのだ。

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 こんなことばかりしているので、肝心の菊月はあまり進展していない。甲板の白い部分は滑り止めシート。作り方はエッチングから型を取った「おゆまる」の上に、ラッカーシンナーをダーッと流してプラペーパーをペッと貼るだけ。2・3日乾燥させてから剥がすと、滑り止めがモールドされたプラシートが出来上がる。0.1ミリよりも0.05ミリの方が作るのが簡単で、貼った時の段差も少ない。問題は接着が難しいこと。溶剤系の接着剤だと、溶けてシワが寄ってしまうのだ。できたシートは放置しておくと丸まり易いので保管に注意していただきたい。(テープで平らなものに止めておくとか)

 しかし、本当に欲しいのは、こういうシート状の滑り止めではなく、インレタのような転写式のパターンだ。擦って転写した上から塗装すると、滑り止めの形に浮き上がって見えるような、何かそういうもの。どこかで製品化されないものだろうか。

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