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金属線を使ってみる

 今回は小物の修正と、金属線の使い方について少々。

 前回の作成中の写真にあるように、旋回軌条やスパンウォーター、リノリウム押えには金属材を使用している。

 タミヤの吹雪を作った際にはプラシートの細切りを使用していたのだが、欠ける・割れる・溶けると、色々悩まされたので、次は金属パーツを使おうと思っていたのだ。これらはエッチングなどの特別なパーツを使用しているのではなく、そこら辺にあるコードをばらして使用したものだ。

 使用方法は金属線をそのまま接着するのではなく、ラジオペンチなどで潰してから貼付ける。長いものはバラストの様な板に挟んでバイスで圧縮する。

 金属線をプレスすると、ごく細長い板ができる。これを立てて接着すれば軌条やスパンウォーター、横にして接着すればリノリウム押えというわけだ。軌条用にはやや太い金属線、スパンウォーターやリノリウム押えには細い線を使用している。問題が解消された上に、エッジが立っていい感じである。リノリウム押えなどは、実感が出る上に接着面が出来るので、金属棒をそのまま接着するよりも絶対にいいのでおススメだ。

 この金属線を潰して使用する、という技は大昔の航空ファンの「ソリッドモデル雑記帳」に載っていたもので、長谷川一郎さんはこの方法でコクピットのレバー類を作っておられた。長谷川さんというと旧軍機の塗色に関して云々されることが多いが、「ソリッドモデル雑記帳」にはこうした工作上のTipsもちりばめられていて、実に制作意欲を刺激されるものであった。長谷川さんの連載が纏められることもなく、忘れ去られようとしているのは本当に残念なことだと思う。

 砲室の補強リブはキットのものでも充分なのだが、なんとなく太いような気がしたので張り替えてみた。そのやり方は先ほどの金属線をプレスする方法の応用編で、下図のようなものだ。手間がかかったわりには、それほど効果が無かったかな、という気がしないでもない。

 

 こうした細かい工作の積み重ねが、また一歩、作品を完成から遠いところへと誘っていく。

砲室表面のモールドを落とし、金属線をリブの位置に巻く。断面の形状に曲げたら、形をくずさないようにして、いったん外す。

外した線をラジオペンチでプレスして板状にする。砲室に接着したら、少しヤスって形状を整え、エッジを出す。横のリブはプラシート細切り。

 接着にはメタルプライマーを使用している。プライマーは樹脂や金属の表面に薄い膜を張るもので、食いつきがよくて乾燥が早い。つまり接着剤の代用になるということだ。しかも、はみ出た部分は薄め液で拭き取ることができる。ただし、接着力はそれほど強くないので、これで押えておいて要所要所に瞬間接着剤を流し込む、という方法をとっている。舷外電路(プラシート細切り)なんかも実はプライマーで付けていて、これは接着剤のはみ出しをきれいに拭き取りたかったから。接着力が弱くても、すぐに上から塗装してしまえば、それほど剝がれることもない。

 今回は時短のため部分的にエッチングパーツを使用したのだが、エッチングの接着にもプライマーを使用している。どうも個人的に瞬間接着剤よりも相性がいいようなのだ。また、今回はパスしたが、窓枠に塩ビなどの薄い透明なフィルムを貼るのにもプライマーが役に立つ。両方とも艦橋に合わせて曲げた状態にしてから貼り合わせるのがコツだ。

プライマーはクレオスのものとガイアのマルチプライマーを使用。ガイアは接着力も強いが、プラを侵す度合いも強い。極薄のプラシートなど、春の淡雪の如くに消し去る。塩ビと金属の接着にはこちらの方が向いている。

 

金属線をプレスするツール。ラジオペンチは100均のもの。

魚雷発射管について

キットは側面扉の蝶番までモールドされている。特型の二番連管は向きが逆になる関係で、扉の開き方も逆になる。開いた状態に加工する人は要注意だ。

前面にモールドを追加

 キットの十二年式魚雷発射管は中央の管が少し高いので、接着部を削って低くしている。また、前面のトビラや窓が省略されているので、モールドを追加する。

 今回は素材を活かす、という名目で、そのままにしてしまったが、防楯側面のモールドには少々疑問がある。キットのようにトビラの前方でジャッキステーが途切れてモンキーラッタルがある、という例が、実艦の写真や公式図では確認できないのだ。これはおそらくグランプリ出版の「日本の駆逐艦」の図が根拠なのではないかと思うが、その元ネタがどうもよくわからない。

 実は数年前、吹雪を作っていた時にこの問題に突き当たって、しばらく悩んでいたのだが、たまたま同じ頃、大型模型を作っている人と話す機会があったので、「日本の駆逐艦」のアレは違っているんですか?と、尋ねてみた。そうしたら、十二年式のラッタルは側面だけではなく、正面にも取り付けられている例もあって、バリエーションがあった可能性がある。こうした細かい艤装は現場の裁量で変更されることがあるから、「日本の駆逐艦」のような配置が全くなかったとは言えないだろう、ということであった。

 なるほどな、と思った。思ったが、実例が見当たらないのだから可能性は低いな、とも思った。

 

 ピットの新武装パーツの十二年式は、ラッタルが後方になっていて、前面のモールドもある。中央の管の高さ、先端の形状なども考慮すると、発射管はピットのほうが出来がいいかもしれない。A型砲はヤマシタの方が文句なしに上なので、武装に関してはどちらか一択にはならないのが悩ましいところだ。

 大型模型で思い出したが、昨年、1/72で小艦艇を作っておられる方から工作に関して色々お伺いする機会があって(と言っても飛行機関連の話だが)、その方のサイトを紹介していただいた。「稲風便り(http://wind-earth.net/)」というのがそれで、睦月型や一等輸送艦、二等輸送艦などの制作過程が多数の写真で解説されていて、非常に参考になる。このあたりの艦を作られる方は是非ご覧になっていただきたい。十二年式の写真もあるので、ディティールアップを考えている方には色々役立つはずだ。

 ところで、そのサイトのお便り写真・番外のコーナーに、昨年末開催された「おおなみ会」の展示会の写真が載っているのだが、その中にある3Dプリンターによる試作品の写真がちょっと衝撃的なんですよ。なんというか、時代はこんなところまで来ているのね。

 

 3Dプリンターの話題も、最近では大分落ち着いてしまった感があるけど、着実に進歩しているのだな。デジカメで例えると、今は300万画素くらいの時代だろうか?おそらく高精細化はさらに進むであろうし、その先には4色(W=白も入れて5色か?)フルカラー再現も可能になるかもしれない。製造現場において、塗装とか色違いパーツの組み立てなどの工程を減らせたら、大きな意味があるからね。もしも、そうなったら模型なんか完全に塗装不要になるだろう。すごい世界だ。生きてる間に実現するかな?

 問題は技術よりもパーソナルユースのニーズではないか。家庭における3Dプリンターはガラクタ量産機になりかねないからね。ヨメに却下されるだけだ。世の中変わって、年賀状の代わりに干支の置物を交換することにならないかな?正月になるとデータの添付されたメールが来て、プリントすると色とりどりの置物が出来上がったりする。やっぱり却下だな。

 

くだらないことを考えていないで早く「浦波」を作れ、と。あと1回続きます。

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