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 睦月型の探照灯は75センチだが、キットのパーツは少し大きい。比べてみるとわかるが同梱の特型のパーツよりもやや大きい。つまり90センチ以上ということになる。これはメーカーのミスというよりも、元にした「長月」の図が違っているからで、公式図にはこういう落とし穴もあるということだ。静協のXパーツの中に70センチ探照灯があるので、頂部の突起と台座を加工して差し替えてやりたい。

 中央部分の相違や、その後ろの銃座の形状に関しては別頁を参照していただきたい。

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長月(左)と三日月(中)の図を比較すると探照灯の大きさが全然違う。長月はなぜか90センチ級の大きさに描かれている。ちょっと見辛いが、実際の長月(右)の探照灯はこんなに大きくはない。三日月同様、台座でかさ上げしているので、高さだけは図と同じくらいなんだけどね。

 主砲のG型砲は大きさはいいのだけど、シールドの形状が今一つで、G型後期特有のコロンとした雰囲気が足りない(図参照)。パーツの画像を見た千葉県在住のKさんという方からも「ペッタンコじゃないか!」という投書がありました。載せちゃえばそれほど目立たないのだけど、単体で見ると確かに違和感がある。これは折れ角の位置どりがマズい上に、下のスカート部分をまるっきり省略しているからではないかと思う。

 ちょっと細かい話になってしまうが、おそらくこの後の神風型や峯風型にも同じパーツが入ってくるかと思うので、ひとつ真面目に対策を考えてみよう。

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実艦(左)とキット(右)。キットのパーツは折れ角の位置が下過ぎ。折れ角の上と下は1対1ぐらいが正しい。この修正はちょっと困難。実艦の側面下端は水平ではなく、後方が切り上がっている(G型砲編参照)。

 キットには本来のパーツであるG型後期のシールドの他に、天辺が開放の前期型のシールドが入っている。前期型は上から下までストレートで、途中に折れ角はつかないのだが、このパーツにはなぜか付いている。そして、その位置はどういうわけか、後期型パーツよりも正しい。だからこれは正しい後期型の形状を持った正しくない前期型のシールドということになる。読んでいる人は何が何だかわからないかもしれないが、実は書いてる方も訳がわからなくなりつつある。

 要するに、前期型のパーツを加工すると良い感じの後期型ができる、ということだ。要領を図にしてみたので、参照してみてください。この修正のいいところは、形状云々はともかく、シールドと甲板との間が狭くなる点で、視線を低くして模型を眺めた時に砲に重量感が出てカッコいいんだな、これが。

 なお、このパーツを本来の初期型として使用する場合は、側面や前面の折れ角を落としてやり、照準孔を開口する必要がある(前期型は基本的には扉が無い。昭和以降では付いているケースもある)。

 小さいし、四つも加工しなきゃだし、見なかったことにするか、他から出るの待つという手もあるな。誰か3Dプリンターで作ってくれないかな。

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①このパーツを使用。 ②折れ角のラインを消さないように前面の突起を削る。天辺をちょっとヤスってプラシートで塞ぐ(折れ角の上が大きくならないよう注意)。下辺に0.5×0.5のプラ材を接着。 ③赤地部分を内向きに斜めに削る。黄色地部分はカット。 ④プラシートの帯や扉等を接着。 ⑤完成。 で、実際に作って見たのが右の上写真。表面処理が不十分で申し訳ない。砲を付けて仮置きしてみたのが下写真。右が修正パーツ。こっちの方が実艦に近くてカッコイイでしょ? 

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製作のヒント 伝声管を張ってみよう

 睦月型の作例はネットで検索するといくつも出てくるが、空中線まで丁寧に張られている作例はあるのに、もっと太い伝声管はほとんど無視されている。そんなに複雑なものでもないので、これを機会に伝声管にも手をつけてみてはどうだろうか。やはりクラシカルな艦型には伝声管が似合うと思うのだ。図で示したのは一例で、左右が異なっていたり、片舷4本だったり、艦や時期によって異なるので、目安として考えていただきたい。写真は菊月の艦橋前面にある伝声管の取出し口の様子。ほとんどの睦月型は同様だが、三日月の取出し口はもっと下にある(G型砲編の写真参照)。艦首や中央部だけなど、部分的に張っても効果的だ。

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 今回も例によって細かいことをグダグダと書き連ねた。小さなことに終始したのは、このキットに大きな問題が無いということで、それだけ優れているということでもある。ピットかハセガワの睦月型を作った経験をお持ちの方は、このキットの良さというものが痛切にご理解いただけるはずだ。

 懸念していた滑り止めパターンの大きさも、特型よりも一段と小さく繊細なものになっている。細かいことだが、内火艇の取り付けダボが上から船腹に移ったのも評価したい点で、これはカッターも同様にしていただきたかった。

 上の方にも書いたが、このキットは「長月」の公式図を正確にトレースしたものだ。それが「睦月」の名前でリリースされていることには色々な意見があるかと思う。しかしながら開戦時の睦月型の詳細な写真や図が存在しない以上、在るものに倚らざるをえないわけで、これは仕方のないことだ。さらに言えば、駆逐艦の模型の多くが個艦の相違というものをほとんど考慮していないことを考えると、ひとりこのキットだけが責められるのは不当と言うべきだろう。細部の再現については、個々人の技倆の試しどころととらえるだけの寛大さで応じられることを、ユーザーには願いたい。このサイトの本意とするところは、より良いイメージの模索であって、メーカーを叩くことはではない。

 おそらくヤマシタはこの後、竣工時のモデルをリリースするはずで、それは「睦月(19号駆逐艦)」の図を下敷きにするであろうから、「睦月」であることにこだわる方は、そちらをお待ちいただきたい。

 

 それにしても、ハセガワは睦月型のリニューアルはやらないのだろうか。ヤマシタのキットがある以上期待薄だが、ハセガワ版ニュー睦月型というのも見てみたい。なんとなくアッサリした作りになりそうな気がするが。(2018.11.9)

 キットの一番煙突周辺は全てリノリウム指定になっているが、実艦は煙突前後の中央部分が滑り止め鋼板になっている(図参照)。なので、ここを修正してグレイに塗装すると甲板の情報量が増えていいかもしれない。

 竣工時の睦月や改善後の三日月の図では、煙突の外側も鉄甲板になっていて、事実、菊月の残骸写真の中には、右舷の軌条の外側の滑り止めがわかるものがある(海中の文月も同様のようだ)。このことから一番煙突の左右は、実際には滑り止め鋼板(軌条内はリノリウム)だったのでは?と考えているのだが、裏付けとなる証拠がない。(2018.12.7追記)

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