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艦橋側面の張出しは16年の「響」と13年の「雷」「暁」とでは平面形が異なっている。これが個艦の相違なのか、開戦前に工事がなされた結果なのか、検証できるだけの材料がない。

Ⅲ型と改善後のⅡA型の烹炊所煙突の基部はこんな形。 Ⅰ型やⅡ型とは異なる。

Ⅱ型とⅢ型では二番煙突の断面形状が異なる。Ⅲ型は前後の幅が同じで薄い。

前檣は艦によって相違があるので、何隻も並べる方は、前後方向の支柱や信号灯を追加する際に意識して工作するといいだろう。

一番砲の防盾は昭和12年後半(14年という説もある)に換装されて、下のように補強された。キットは換装前と後が混ざっていてどっち付かずのものになっている。1941年時ならば、補強フレームを後端まで伸ばしてやりたい。また、下側のフレームは砲室正面にも通っている。キットはモールドがないので追加したい。

実艦写真で確認してほしいのだが、二・三番砲は補強フレームが付かないはず。最近のパーツや記事などでは当たり前のように付いているけどどういうこと?モールドは削りとって平滑に。

後端付近(特に左舷)は推定。艦橋の滑り止め部はもう少し(後方に)広いかもしれない。ちなみにⅡA型の艦橋前も同様になっている。

図の黄色部分は上からリノリウムを貼っていた可能性もある。

響の艦首部分。損傷のため、艦首が垂れ下がり、砲塔下の鉄甲板部が持ち上がっているのがわかる。

 船首楼甲板は艦橋付近の左右両端に滑り止めの彫刻が施されているが、これは改善前の「暁」の図を参考にしたものだろうか。改善後の敷物は少々異なっていたようで、有名な工藤艦長の写真を見た事が有る方は、「雷」の艦橋横が滑り止めになっていることに気づかれたと思う。あの写真をよく見ると、奥の方(船首楼後端付近)はリノリウムになっている。すなわち艦橋周辺が滑り止め、後端付近がリノリウムというのが改善後の敷物状況だ。これを図にしてみたものが上だが、この艦橋付近の配置は改善後のⅡA型とよく似たものだ。

 名前は失念したが、陸海軍の軍装や残存機材、遺稿などを大量に掲載してあるサイトがあって、そこに終戦後「酒匂」乗り組みだった方のアルバムが展示してあったかと記憶している。その中の1枚に改善直後の「雷」の前甲板で撮影された記念写真があったはずで、艦橋前の敷物がわかるので、興味を持たれた方は探してみていただきたい。先ほどの工藤艦長の写真と併せて見ると、なぜ上図のように考えられるのか、ご理解いただけるのではないかと思う。

 図の一番砲付近は多角形の鉄甲板になっているが、これは「響」の艦首の写真を元に、改善前の「暁」の図に書かれた砲基部の形状、ⅡA型や友鶴の図などを参考に、ラインを引いていった結果で、意図したわけではないが陽炎型や夕雲型に近いものになった。この部分は砲を載せてしまうと、ほとんど見えなくなるので、無視してもいいかもしれない。

 砲基部にしろ艦橋付近にしろ、推定でしかないので、これが絶対正しいとは言わない。もし、詳しい資料をお持ちの方がいらしたら、ぜひご連絡を。必要があれば訂正し、追記としてご紹介したいと思う。

改造のポイント

 タミヤかピットのキットから艦橋を持ってきて、改善前のⅢ型を作る、というのは誰でも思いつくことだが、実際にやってみると船首楼甲板を始め、改修箇所がいくつもあって、結構面倒なことになるかと思う。砲はアオシマの初春か、ピットの特型のものを利用すればいいとしても、発射管が問題。改善前の発射管の防楯は、正面が垂直で、やや背の高い箱形の形状で、キットとは異なるものだ。残念なことにパーツ化はされていないので、自作するしかないだろう。

 艦橋と砲だけ変えて、雰囲気だけのお手軽改造でもかまわないが、改善前の特Ⅲを作ろうなどと考える人はすでに少しタガが外れかけていると思うので、ここはひとつ徹底的に、変えられるところは全て変えて、あたかも別の艦の如くに作り上げて欲しい(私はやりませんが)。千鳥型と初春型、それに本型の3つは「日本三大変態(昆虫などの生物学的な意)小艦艇」とでも名付けたくなるほど、改善工事前後の変容著しく、その変わりっぷりを存分に堪能していただきたい。(くどいようですが私はやりません。)

このタイプの防楯は、改善前のⅠ型やⅡ型も装備していた。白雲や東雲が使用していたのは同じものでも上部がカマボコ型に丸くなっているタイプで、いくつかのバリエーションがあったようだ。

 「響」にはキスカ撤退時の特別仕様があって、三番砲以降の装備を撤廃して、大発を搭載していた。その体裁は図のようなもの。さらに艤装煙突を立てて、3本煙突になっていたようなのだが、その詳細は不明。すなわち適当に作ってもどこからも文句は来ないということだ。

 

台座固定用に爆雷投下軌条は残されている。 台座上には10本の円材(木)を楔で固定。

 

戻ってきた大発は底に穴を開けて沈めてしまうので、揚収装置は無い。

 

親類にこの作戦に参加した人がいたのだが、何か聞いておけばよかった・・・・。

 以上、また余計なことを並べてみた。

 細かな相違はあるにしても、写真を見ていただければわかる通り、ヤマシタのキットは既存のものよりもはるかに優れたものだ。ようやくⅢ型に見えるキットが出てきた、という感じがする。あまり手を加えなくてもそれなりにカッコイイⅢ型が出来上がるし、工作を楽しみたい人には充分に手を入れる余地がある。細部をあれこれ言うことができるのも、それなりの下地があるからで、他のキットを使用していたら、まずプラバン積層で船体を削り出すところから始めなければならない。各部を云々するまでには長い道のりがあるだろう。人生は有限だ。特Ⅲを作ろうと考えるならば、迷わずこのキットを選択することをおすすめしたい。

 

 色々書いてあるが、これら全てを修正しなければならない、ということではない。模型は実物の再現ではなく、イメージの具現化にすぎないのだから、何から何まで実物と同じでなければならない理由はどこにもない。(大体、滑り止めの大きさとか木甲板の幅とかどうするのか?大型模型でもなければ『正確』には再現できないだろう)作者のイメージに合致していれば素組でも全然かまわないと思う。ただ、もう少し手を加えたい、写真に近づけたいと考えたときにこのページが多少でも参考になれば幸いである。このサイトはそんな考えで作っている。小艦艇はキットでも情報でも、本当に恵まれていないからね。

今回はⅢ型編も兼ねているのでやや詰め込みすぎた感がある。4月はこの図版の作成でサイトの更新ができなかった。(イラストは時間かかるの)少し読みづらかったかもしれないと反省している。煙突の配管関係、ベンチレーター、塗装など、省略したり、図を載せきれなかったものもあるので、キットを実際に製作しつつ追加で述べてみたい。このキットは真剣に取り組むとⅠ型より手がかかりそうなので、あまり自信がないのだけれど。甲板、全取り換えしたくないなぁ・・・・。例によって少々時間がかるかもしれないが、気長にお待ちいただきたい。

タミヤの特型は、なぜかどれも煙突の断面が小判型なので、このパーツを利用するとⅢ型の二番煙突を作ることができる。写真は初雪の煙突に1ミリのスペーサーをかましたもの。プラバン積層よりはラク。積んでいる方はおためしを。

特Ⅲ型の船首楼甲板について修正

 「綾波」に備えてⅡ型の資料を色々検討していたのだが、Ⅱ型(ⅡA)およびⅢ型の艦橋まわりの滑り止め部は、カッターダビッド位置を後端とする帯状だったのではないか、という可能性が出てきた。正解を出せる程の資料もないのであくまで推測でしかないのだが、こちらのほうが真実に近いのではないかと思う。ただし、Ⅲ型はⅡ型と違ってカッター位置が左右で異なるので、後端も両舷同じではないかもしれない。
 そういうことで、申し訳ありませんが船首楼甲板の想像図を下記のものと差し替えます。すいません。(2016.10.21 追記)

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