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特Ⅱ・Ⅲ型製作編  2 3
 地味なタイトルで始まったⅡ型製作編。ここではヤマシタのキットを作りながら、細部についてもう少し解説してみたい。同時進行でⅢ型も作っていくので、併せてご覧いただくつもりだ。
 
 ところで、その前にⅠ型製作編の最後に予告したⅡ型のスクラッチがどうなったのか、説明しておきたい。
 
 「吹雪」を作った時にはタミヤかピットしか選択肢が無くタミヤを使用した。どちらのキットも船体に問題があって、イメージに合ったものにするには、それなりの工作が必要になる。特型は各バリエーションで、5〜6隻作ってみたい、という希望があった。でも平面形を修正したり、フレアを削り出したり、というような作業を何度もくり返すのは正直気がすすまない。
 「吹雪」1隻でも容易では無かったので、どうしたものかなと悩んでいたのだが、船体そのものをいくつもスクラッチしてしまおう、と思いついた。
 この場合、ひとつ作ってキャストで複製、というのは最初から除外した。というのも特型は、軌条や敷物などにバリエーションがあって、ひとつの形状で全てをまかなうということができない。船首楼も一様ではない。また、収縮や変形の問題もある。別に用意した甲板を貼り込んだり、船首楼甲板の後端を加工したりを考えるとプラ材であることが望ましい、ということもあった。

書き出したパーツ図。A4サイズに2隻分のパーツ。切り出すだけで嫌になってくる。 後述の理由によりボツ。

 艦船のスクラッチは古くから、パンとバター方式のプラバン積層から削り出す方法が一般的だが、これを何隻も同じように削る自信は無い。この際だから白状するけど、私はそんなに器用ではない。特型の舷側にはフレアがあるが、これを左右同じに削ることができないのだ。気をつけてやっているつもりでも、なにかねじれたようなものが出来上がってしまうのである。飛行機のソリッドモデルもそれで挫折した。1隻の左右ですらままならないのに、複数作って同じようなものができるわけがない。
 
 そこで、ブロックからの削り出しではなく、パーツを組み合わせて作製する方法を模索してみた。線図から断面形を起こして骨組みを作り、外板を貼る、という大型模型なんかの手法だ。とりあえずパーツを起こして骨組みを組み立ててみた。というのが予告の状態。
 で、どうなったかというとダメだったんですよ。これが。
 
 外板を貼ってサフを塗って、磨いてその上に表皮(モールドしたプラシート)を貼るつもりだったのだけど、ダメ。サフを厚めに何度も重ねるのだけど、リブ間のへこみが許容できるものにならない。さすがにこれを「やせ馬」を表現してみた、と言い張る勇気はない。フレアの感じはそれらしいのだけど、やっぱりダメだ。

1:組み立ててみた骨格部分。予告の状態がこれ。 2:下張りを貼ってみた状態。 3:サフを塗って磨く。表面の凹凸が無くならない。 4:プラの舷側を貼る。やっぱり表面の凹凸が無くならない。

  では、どうするか。
 
 たとえば、この骨組みに細長く切ったプラ材をいくつも貼っていって成形する、という方法がある。だが、大昔そのやり方で飛行機の胴体を作ったことがあるのだけど、ヒビとか割れとか穴とか、補修でえらく手間がかかった記憶がある。それに5隻もプラ張り合わせをやるのは、ちょっと許していただきたい。
 
 さらにはリブ間をパテで埋めて削り出す、という方法。やはり以前、この方法で飛行機をスクラッチしたことがある。 プラバンで骨格を作って間をエポキシで埋めて成形してみたのだが、はっきり言ってこれはオススメしません。
 大体の形状を作って、ペーパーをかけて整える。でも、なんか違うのだな、削れ方が。整形しやすいように、あまり硬くないエポパテを使ったのだけど、ペーパーをかけるとパテの部分ばかり削れて、だんだんプラのリブが表面に出てきてしまってツライチにならない。結果、パテで再度外側を覆うようにしないと表面がきれいにならないので、リブの意味があるんだか無いんだかわからないものになってしまった。だったら最初からパテで作れよ、ということだ。でも1/700の船体をエポパテで作ると、多分舷窓のフチが欠けたりして往生すると思うよ。飛行機もスジボリで挫折しかけた。
 やはりプラバン積層から削り出すしかないのかな、でもその方法だと個体差が生じやすいし………。しばらく悩んでいたのだが、積層する板を切り出す段階である程度形にして置いて、共通化してしまえば、複数作っても同じようなものができるのではないかと考えた。
 正面線図をもとに、船体を前後方向ではなく、上下方向に0.5ミリ間隔で輪切りにしたラインを求める。その形状に切り出した板を積み上げていけば、大まかだがフレアの付いた船体ができあがるはずだ。言ってみればアナログな3Dプリンターだ。

書き出したパーツ図。赤線は友鶴用のもの。各1隻分。前より楽とは言え、切り出すのはやはり面倒、

 いきなり作ってみて失敗したら悲しいので、小さなもので試してみた。それが「友鶴」(現在中途で放棄中)。プラバンと溶剤系の組み合わせはどうしても変形(反り返り)が生じるので、ボール紙を積層、整形、サフを塗って磨いた後、プラシートを側面と上面に貼って仕上げた。そうしたらなかなかいいんですよ、これが。

プリントアウトを厚紙に貼り、切り出し たパーツを積み上げていく。

張り合わせた状態ですでにフレアがついている。

サフを塗って磨いた状態。このあとプラの 外皮を貼る予定だったのだが…。

 早速、特型の船体を書き出してプリント。ボール紙を切り出してざっとペーパーをかけたら、サフを塗って磨き、凹凸をチェック。あとはプラシートの外板を貼り込んで整形すれば、いよいよ特型量産化始動か、と思われたそのとき、
ヤマシタホビー「吹雪」開発発表。
 
もう、なんと言うか……。途方にくれるとはこのことかと。 苦しんだので言えるのだが、ヤマシタの船体はよくできてます。みなさん製作、改造のベースにはこれを使いましょう。 ということで、次回からはヤマシタのキットを製作していきます。

©2014.10.15 禁無断転載 図版の無断使用、加工等はお断りいたします。

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