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特Ⅱ・Ⅲ型製作編  2 3
 すっかり更新をさぼってしまって申しわけない。何もしていなかったわけではなく、それなりに手は動かしていたのだが、目立った進捗がない上に、途中であれこれ試してみたくなり、結果サイトの更新まで手が回りませんでした。すいません。
 
 さて、今回は甲板をほとんど貼り替えるという、少々面倒な作業についての解説。キットのままで充分、という方は読み飛ばしていただきたい。
 
 レビューでも書いたが、ヤマシタのこのシリーズは魚雷運搬軌条の形状がスタンダードなものとは異なっている。これを修正するとなると大工事になるので、目をつぶるか、同じ軌条の艦を作成するか、なんらかの妥協が必要になる。 ここは素直にキットのモールドを活かして組むのが正しい楽しみ方なのかもしれないが、レビューであれこれ言った手前、直さないわけにはいかない。いつでもそうだが、修正したものを提示できない批評は意味がない、と思うんだ。
 
 そういうことで甲板を貼り変えてみた。面倒には違いないが、軌条部分だけでなく艦尾や船首楼も修正したい、甲板室上面にできるフチをどうにかしたい、ヤマシタの滑り止めパターンは少々大きいのではないか、という理由もある。人間としては間違っているかもしれないが、直せるものは直してみたい。
 手順としては上甲板や後部甲板室上面などのモールドを一旦全部削り落とし、パターンや軌条を貼り直していく。同じように、甲板に手を加えたいと考えている人のために、ヤマシタのキットに合わせた型紙を用意しておいたので、参考になるようならば使ってみてください。
 甲板のモールドを削るにあたっては、特に注意することはない。後部にあるボラードや、中央部の天窓などは形を崩さないようキレイに削り取って、後で再利用すると便利だ。
 
 問題は滑り止めのパターン。通常ならばエッチングパーツを使用すればいいのだろうが、私には金属板を細かく入り組んだ形状に、きれいに切り出すだけの技術が無い。そこで、今回はプラに材質変換して使用することにした。なんのことはない、おゆまる複製だ。
 まず、エッチングの滑り止めを「おゆまる」で型をとっておく。
 次に適当なビンにランナーなどの廃材を入れ、そこにラッカーシンナーを注ぐ。塗料ビン生ぐらいの濃度に溶けたら、筆で型の上に流すように広げる。そのまま放置、乾燥を待つ。これだけ。
 理想を言えばできるだけ長く乾燥時間を取りたいが、半日ぐらいでも滑り止めのモールドが付いたフィルムができあがる。できたものはプラ素材なので、普通のプラパーツと同じように接着・塗装ができる。型に塗る溶かしプラの厚みは薄いほうが乾燥が早く、見た目もいいのだが、割れたり破れたりしやすく、接着剤の溶剤で崩れたり溶けたりする欠点がある。もっとも、失敗したものは溶かせばまた再利用できるので、それほど神経質にならなくてもいい。
伸ばすだけではないランナーの使い道
 ここで溶かしたプラ材を使うことについていくつか申し上げておきたい。
 溶かしたプラ素材は造形材料として使用できるか?という疑問に関しては今でも時々話題に上ることがあって、変形がひどい、表面に皺がよる、などの理由から、樹脂の代用とはなりえない、というのが大方の意見であったかと思う。だが、私としては、使い方さえ間違わなければ溶かしたプラ材は充分使用できる、と考えている。
 変形や皺などが、なぜ発生するのかと言えば、それはプラ中の溶剤分が揮発することによって体積に変化が生じるからだろう(間違っていたらすいません)。揮発は空気に接する面で多く発生する。ということは、空気にふれさせない、片面どりで型から外さずに硬化させれば、モールドを複製することは可能なのだ。この場合、硬化を早めるためにも、使用するプラ材を極力少なくすることが望ましい。
すなわち、
厚く盛らない、大きくしない、型から外さず乾燥させる、乾燥時間を充分とる
 
 という4つを念頭に置いて作業すれば、ラッカーシンナーで溶かしたプラ材は充分使えるのである。
 右の写真は以前スクラッチした48のフィギュアで、ソ連軍パイロット(のつもり)。大昔は48の空モノフィギュアなんてものはほとんど無かったので、バンダイの機甲師団シリーズを芯にして作ったものだ。ただ、顔だけはどうしようもなくて、モノグラムのパイロットを複製して使用している。型取りはシリコンだが、キャストは使わず、溶かしたプラ材でコピーした。1984年頃の作だが、どうです?顔、変形してないでしょう?

か、顔がテカってる・・・。

塗装は水性塗料。レペ or ホッペ使用。

 というような無駄話をしていると一昼夜ぐらい、すぐにたつので、おゆまるの型に塗ったプラをそうっと剝がしてみる。向こうが透けるような薄い滑り止めシートが出来ている。そのまま置いておくと丸まってしまったりするので、マスキングテープで平らなものに貼付けて保存しておく。見ての通り薄いので取り扱いは要注意。溶剤系の接着剤を使うときは、あらかじめ裏側にメタルプライマーを塗っておくと、溶けるのが少し防げる。エッチングパーツをきれいに切り出せる人は、こんな面倒なことするよりエッチング使うことをおすすめしますけど。

出来上がった滑り止めシート。薄いので扱いづらいが、段差を考えなくてよいのは利点。

甲板室上面や銃座はやや厚みのある、しっかりしたものを使用。プラシートから作る。

 甲板室上面は薄いと下地の凹凸が出てしまうので、プラシートを利用したものを使用。作成方法は、おゆまるの型の表面にラッカーシンナーをたっぷり塗って、乾かないうちに0.1または0.05ミリのプラシートをペタッと貼り、さらにその上からラッカーシンナーをサッと塗って乾かしたもの。この方法だと厚さが均一になっていいのだけど、気泡が入って失敗する確率も高くなる。
 ところで、溶かしプラに代わるいい素材はないかと探していたら、カミさんの持っていたクリアーのマニキュア(ハードコートとか云うの)というのがあったので、拝借してみたんだが、案外いい感じに滑り止めシートができたんですよ。でもダメなんだ。ラッカー系のカラーで塗装すると表面が溶けちゃう。ネイルというのは、あれ何系の塗料なんですかね?
 貼り込んだものを塗装してみた。手前Ⅲ型、奥Ⅱ型。軌条はⅢ型は金属線をツブしたもの、Ⅱ型は細かい孔を開けて細切りにしたプラシートを使用。ちょっと工作が雑だな。構造物で隠れるところは結構手を抜いている。
 
 何度も言うけど、甲板、直さないとダメということではないからね。
 
 今回は滑り止めの話で終わってしまったわけだが、「吹雪」とか「浦波」を作ったときは、これとは違う方法(ヒートプレス)で滑り止めを作成している。そちらも解説してみたいのだけど、エッチング全盛の時代、そんな技術、需要あるのかな?読者的にはどうなんだろう。 (2017.5.8 初出)
 
 話は変わるが、先日人と話していて、軽巡の「那珂」の話題になって、「那珂」は戦時中の修理の際、一番煙突を短縮して4本同じ高さになった、と言ったら、そんな話知らない、と言われた。なるほど、軽巡関連の本を読んでもそんなこと書いていないし、キットの「那珂1943」も一番煙突は高いままだ。たしか何か(「舞鶴造機部」だったかな?当の本が出て来ない)で読んだ記憶があったのだが・・・。巡洋艦はよくわからないので、自信ないのだけど、どっちが正しいんだ?
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