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特Ⅱ・Ⅲ型製作編  2 3
 今回は特Ⅲ製作の完結編。ようやく完成まで持ってこれましたよ。本当はⅡ型を作らないといけないのだけど、Ⅲ型のほうが先に着手していたのと、より手間がかかる関係で、ひとまず特Ⅲを完成させることにした。アクセス状況を見ると特Ⅲ関連のほうが反応がいいのだけど、世の中そんなに特Ⅲ好きが多いのか?解せん。
 
 こんなに時間がかかったのは、一にも二にも私がだらしがないからだが、キット自体にも手を加える所が多くて、中央部分の半分くらいはスクラッチに近い。何もこんな思いまでして作らなくても、とも思うが、やっぱり修正例が見せられない批評はイカンと思うのだ。そもそも自分のまいたタネなんだから仕方がない。
 とりあえずイチャモンつけたところは修正したつもりなので、どんなものか参考にしてみてください。
 中央部分のユニットは二番煙突の位置を1ミリ弱、後方に下げている。煙突の前後でカットして、前にスペーサーを入れ、後ろを詰める。ユニット自体の長さは正しいので、その長さの中で位置を移動するわけだ。結果、一番連管の後方にスキマができるが、新たに作った発射管の作業甲板で塞ぐ。このあたりの左右には比較的目立つ吸気筒があるのだが、キットでは省略されているので追加している。
 二番煙突は断面が平たいものをスクラッチしているが、これは後期型のキットでは修正されているので、そちらを入手することをオススメする。
 煙突を下げたことで、機銃台のある作業甲板が入らなくなる。これはキットのパーツ形状が違っているからで、修正を兼ねて自作。
 右の機銃台を一段高くしているが、実は確証がない。Ⅱ型は連装機銃に換装した際に銃座を拡張したわけだが、Ⅲ型は変更があったのかどうか、明確にできる資料がないのだ。そもそもなぜ左右で段差があるのか、なぜ同じ高さにしなかったのか、Ⅲ型はわからないことが多い。
 右舷の魚雷格納筺は表面のパターンが異なるので変更している。プラシートの上に細金属線を貼付けてパターンを作り、それをおゆまる複製している。複製するのはⅡ型でも使うため。 写真左下から時計回りに、金属線で作ったパターン原型、キットのパーツ、溶かしプラで複製したパターン、キットパーツ表面を削って複製を貼付けたもの。
 キットの指定では艦橋前にリールを三つ並べるようになっているが、実際には真ん中にあるのは荒天用排気筒だ。実艦写真を見ると艦橋前にゴチャゴチャした固まりがあるかと思う。正面の排気筒と左右のリール、そして排気筒の前に並んだ2つのリール、それがこの固まりの正体だ。
実艦はもっとハゲシく汚れているのだけど、さすがにそこまでやるのは考えてしまう。艦橋の記号は手書き。大きくは見せられません。楷書体のひらがなの丁度いいインレタがどこかに無いものか。
前の煙突の角度を変えると、ジャッキステーの角度も異なってしまうので、一旦モールドを全部落として金属線で張り直している。当然配管も新規で作り直すことになる。
開戦時の塗装に関して
 開戦時の艦船番号標識については未だ確たるものが無くて、推定に依らざるをえない。様々な状況証拠から考えるに、一水戦は一番煙突、二水戦は二番煙突に、ひらがなの「いろは」を描いていたようだ。一水戦・六駆の「響」が艦橋に「い」と描いていたのは、本来の位置である一番煙突が細いため、スペースが無いからで、特Ⅲ型特有の事情によるものとみられる。開戦に際して、各艦では艦上の天幕等をグレイに塗りつぶしたわけだが、この塗装範囲にもバラツキがあって艦によって多少差がある。四水戦戦時日誌の十二月二日の項に「第三艦隊信令第一二九號 十二月六日迄二艦橋側幕其ノ他常時展張シアル天幕類ヲ鼠色二塗粧スヘシ」とあるが、この「常時展張シアル天幕類」の解釈が駆逐隊間で異なっていたようで、なにからなにまでグレイに塗りつぶしてしまった艦もあれば、砲身基部や短艇類にかけられたシートなどは白いまま、という例もあった。「響」は後者で、砲塔のカンバス部などは無塗装であった。作例は模型的な見栄えを優先しているわけではなく、実際にこのような塗装であったのだ。
各砲前には射界制限器が付いているが、これは形に曲げた金属線をツブして作った。ダビット類も同様。
ヤマシタのキットのいい所は揚貨機と演習砲が別パーツで付いているところだ。ただし演習砲は少々オーバースケールなので、長さと高さを切り詰めて使用している。
 特Ⅲ型に関してはこれで終了。次はⅡ型か。その前に「朝潮」作ってしまうかもしれないけど。正直、特型のスキッドビームにはうんざりしてきた。エッチングパーツが発売された時に、スキッドビームが入っていなかったことで文句を言われていた方がおられたが、それはちょっとメーカーが気の毒というものだ。この部分は上下前後左右、あらゆる方向にフォルムとモールドがあり、さらにそれぞれの接合部が厄介なことになっているわけで、エッチングだけで全て再現するには無理がある。ナノドレッドか高精細の3Dモデルでないと難しいと思う。今はエッチング全盛の時代だが、こうしたアフターパーツも3Dモデルに置き換わっていくのではないか。私としてはダビットから吊止バンドまで一体になった短艇パーツの登場を切に望む。
 
 以上いろいろ書いているが、ご覧の通り、このキットは手を加えれば加えただけ良くなっていく、素性の良いキットなので、ぜひ購入していただきたい。このキットの良さは製作して見ないとわからないので、実際に作られることをオススメする。

 
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