特Ⅱ型資料編       

艦橋

Ⅱ型の艦橋の3つのタイプ

 Ⅱ型の艦橋には、羅針艦橋の平面形がⅠ型とほぼ同じの波タイプと、前方に四角く拡張した霧タイプ、そして拡張部分をきれいに成形したⅡA型の3種類がある。拡張したとは言ってもその差はごくわずかで、700分の1にするとほとんど差はない。差別化を図るならば、波タイプは窓下の波がえし、霧タイプは正面の平面部分、ⅡA型は上部艦橋の遮風窓(ガラス窓)などに注目するといいだろう。

朝霧と曙の上部艦橋前面には従羅針儀?が付く。初雪にも付いていたが、このような装備の艦が、駆逐隊ごとに1艦ずつ有ったのか?

 頂部の測距儀は開戦前に九三式三メートルに換装。霧グループとⅡA型は写真が残っているのだが、綾波・敷波には資料がない。以前、開戦直前に敷波に乗り組んでいた方の手記がネットに上がっていたが、その方は敷波の測距儀は3メートルと2メートルの2種類で、艦橋頂部のものはドーム型であった、と書いておられた。傍証でしかないが、やはり綾波・敷波も開戦前に九三式三メートル測距儀に換装していたと思われる。

 測距儀の大型化にともない、干渉を避けるために前檣が10度後方に傾斜している。昭和15年以降のⅡ型の特徴だ。この傾斜があるがゆえに5kw信号灯は三脚の横桁にとりつけられている。日本駆逐艦の中ではⅡ型だけの装備方法だ。

 Ⅰ型同様、30センチ信号灯は開戦前に廃止になっていて、それに伴いブルワークを削除した艦と残した艦とがある。削除したのは狭霧と漣、残したのは夕霧・天霧・朝霧・潮・曙で、その他は不明。30センチ信号灯廃止の理由は明らかではないが、昭和11年頃、水雷戦隊旗艦である軽巡洋艦から、30センチ信号灯が非力で、特に夜間散開した際など役に立たないので、大型のものに換装してほしい、という要望が出ている。件の軽巡の場合、仕方なく照射用の大型探照灯を信号灯代わりに使用したとの記述があるので、おそらく駆逐艦でも同様であったのだろう。

ブルワークを削除した例。図は狭霧。

天霧のブルワークは形状が少し異なる。

「日本の駆逐艦」掲載の朝霧の艦橋図について

「日本の駆逐艦」(P117)掲載の朝霧の羅針艦橋平面

霧タイプの羅針艦橋平面

(同書の漣の図)

 グランプリ出版の「日本の駆逐艦」には朝霧の艦橋の詳細な図が掲載されているのだが、この図には不可解な点があって長い間疑問だった。

 霧タイプの艦橋は上で述べたように、前面の増積部分の角張った形状が特長で、平面形もそのような形状であることは夕霧の図などで確認することができる。ところが、朝霧の図の羅針艦橋平面は前面が丸く、増積もされていないのである。朝霧の艦橋が霧タイプ特有の形状であることは写真から明らかで、本来はその前のページに掲載された漣の艦橋図と同様になるはずだ。(なぜ漣が霧タイプの艦橋なのか、ということはひとまず置いておく)

 この図はなんらかの公式図を元にしていると考えられるが、公式図は往々にして事実と異なる場合があるので、これもそのケースかな?と思っていたのだが、どうもそうでもないらしい。

 朝霧は昭和5年6月の竣工なのだが、竣工直後の昭和5年9月に羅針艦橋前方の一部拡張に関する訓令(C05021606700)が出ているのである。 その中に拡張の理由として「使用実験ノ成績ニ鑑ミ同型新造艦同様本拡張ヲ必要ト認ムルニ依ル」という一文が記されていて、そこから推測するに、朝霧の艦橋は竣工時には拡張されておらず、波タイプと同様の形状ではなかったか、と考えられるのである。

 出典が明らかではないので断定はできないが、「日本の駆逐艦」の図は、もしかすると朝霧の竣工時のものなのではないだろうか。朝霧の拡張前の艦橋の写真が無いか探しているのだが、今のところ発見できないでいる。拡張工事は昭和6年1月末迄に完成、となっているので、昭和5年の朝霧の写真があれば事実が判明すると思うのだが、見つからないのである

2015.8.15初出

艦橋編参考資料

グランプリ出版:『軍艦メカニズム図鑑 - 日本の駆逐艦』 光人社:図解・日本の駆逐艦 海人社:世界の艦船 第221集「連合艦隊華やかなりし頃」 ハンディ判日本海軍艦艇写真集16巻/駆逐艦 吹雪型[特型] 歴史群像 太平洋戦史シリーズ18 「特型駆逐艦」 70「完全版特型駆逐艦」 太平洋戦史スペシャルシリーズ4「日本の水雷戦隊」 アジア歴史資料センター:第3129号 5.9.22 駆逐艦朝霧羅針盤艦橋一部拡張の件(C05021606700)

 

©2014.10.15 禁無断転載 図版の無断使用、加工等はお断りいたします。

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